五番街のマリーへ/ペドロ&ガブリシャス

 ♪悲しい思いをさせた それだけが気がかり


 ……阿久悠の言葉にこんなのがある。「僕は作詞でドラマをやりたかった」。メロディに会う言葉であって韻を踏ませつつ、ドラマ性を持たせる。はっきりいって並大抵の苦労ではないだろうが、にも関わらず幾多のヒット曲を飛ばした阿久氏の技量に、今さらながら感服する。
 考えてみると、今まで紹介してきた曲も歌詞のドラマ性が強いものが多い。現在のヒット曲等をイマイチ面白くないと感じるのも、自分がそういった歌詞のドラマ性&演奏にこだわっている為だ。この曲の強みは、まさにそのドラマ性の強さで最後まで聴かせてくれる。五番街の情景や人々、マリーという女性、そしてこの「尋ねてほしい」といっているある男……。まるで外国の恋愛映画のよう。高橋真梨子の歌声もいい。
 では最近の曲が全部嫌いかというとそんなことはなく、個人的に「これは!」というのもある。最近といっても大分前だが、例えば「歌舞伎町の女王/椎名林檎」は大当たり。「夏色/ゆず」も結構気に入っている。愛だの恋だのを歌うのは結構だが、単なる自己主張で終わっているのでは芸が無い。ドラマを作れ。そしてその歌声で大いに聴かせてほしい(長すぎない程度に)。