この道具が欲しい!

 ……家庭用ビデオカメラというと、現在はもはやデジタルビデオの世界。DVDで録画、というのも出た。ちょっと前だとソニーのハンディカム、シャープの液晶ビューカムとかが8ミリテープでしのぎを削っていた。さらにさかのぼると普通のVHSを使ってたもんだが(おまけに高い)、その頃と比べるとビデオカメラも随分身近なな家電になったものだ。
 で、その前は「私にも写せます」の8ミリフィルムだったわけだが、8ミリというとどうしてもアマチュア製作の特撮映画を連想してしまう。かの有名なDAICONFILM製作の『帰ってきたウルトラマン』『愛国戦隊大日本』等は、その頃素人でも手に入れられる8ミリカメラの中でも、2倍までの高速度撮影とフィルムカウンター付という機能があるものを使用したそうである。この機能の何がいいかというと、高速度撮影は特撮の基本*1だし、カウンターが付いていれば二重露光*2が出来る。今、特撮ものをデジタルビデオで作るのならPCで全て編集がきくが、そんなものが無い時代には画期的だったのだろう。
 その時代の8ミリ特撮ブームは、かの藤子・F・不二夫大先生にも影響を与えていた。その名もズバリ「イージー特撮カメラ」というひみつ道具が「ドラえもん」第20巻に登場するのである。

 ドラえもんから「イージー特撮カメラ」をもらったのび太は、みんなで映画を作ろうとまずしずか邸を尋ねるが、宿題を教えに来ていた出来杉が興味を示す。出来杉は8ミリで特撮モノを撮りたいと願っていて、既にシナリオ『宇宙大魔神』を完成させていたのだ。ドラえもんもその案に賛成。衣装に“きせかえカメラ”、ミニチュア製作用に“インスタントミニチュア製造カメラ”、造形物に“ラジコンねんど”、さらにスタジオとして“ポップ地下室”を提供してもらった3人は早速行動を開始。スネ夫達も加わって俄然撮影は盛り上がるが、途中からひょっこり現われたジャイアンをどうするかで困ってしまう。残った配役から、肝心の宇宙大魔神ジャイアンにやってもらうしかないが、悪役を素直に引き受けるわけもない。何とか騙して撮影を続行する一同。どうにか完成した『宇宙大魔神』は、ジャイアンに内緒で上映会を開くことに。そこへジャイアンがやってきて……。

 ……ドラえもんひみつ道具を特撮に利用する、という、何とも特撮心を刺激されるエピソード。ちなみに「イージー特撮カメラ」は、合成や高速度撮影まで何でも出来る万能カメラらしい。後は演出力さえあればアマチュアどころかプロをも凌ぐ大作が撮れてしまう! 何て夢があるんだ(笑)。で、案外これに味を占めた出来杉は、将来映画監督になったりしてね。
 こんなことが出来る道具なら、俺も欲しい。

*1:例えば重量感ある怪獣の歩みや、崩れ落ちるミニチュアが本物のように見えるのは全てこのテクニック

*2:一度撮影した後まだ現像していないフィルムを使って、もう一度別のものを撮る方法。合成等に用いる