怪奇大作戦 第6話「吸血地獄」

 富豪・朝倉家の養女・ニーナが恋人とのドライブ中に事故死するが、雷鳴轟く夜彼女は突如復活を遂げた。だが彼女は血液を求め、吸血鬼のように次々と人を襲い始めるようになる。それを知った恋人・周作は彼女と共に九州へと逃げた。警察は吸血殺人事件が東京から九州・別府に移動したことを重要視し、SRIに捜査協力を求めるが……。

 「怪奇」としては初の地方ロケ・九州編。不慮の事故から吸血鬼と化してしまった恋人との逃避行を描いているが、今回に関してSRIは全く打つ手無し。血液関係の病気の薬を服用していたからとか、ニーナがポーランド出身だったということが台詞でも語られているが、吸血鬼になったのかという原因は最後まで曖昧なままだ。この辺に金城哲夫の迷いを感じる。
 金城が脚本を書き続けた「Q」「マン」「セブン」は、いずれもSFではあるが、不可思議なものが入り込む余地が十分にあった。「Q」など特にそうで、時にファンタジーとなりSFとなるこの世界感の中で、彼はその腕を存分に奮っている。「マン」や「セブン」でも同様だが、「怪奇」の場合、「現実」という土台に完全に足が付いてしまっているため、ファンタジーや不可思議さの入る余地がどこにもなかったのだ。プロデューサー・橋本洋二が掲げた「現代の怪奇」と、金城が従来描いてきた「不可思議」は合致しなかった。彼が円谷プロから離れていったのはこの時期だが、果たして「怪奇大作戦」に金城はどういう印象を抱いていたのだろう?
 とはいえ話そのものは、他のエピソードにもあるような、結局は救われない“悲劇”として成り立っているので、「怪奇」の中では異色作になることなく納まっている。