怪奇大作戦 第5話「死神の子守唄」

 次々と発生する女性の氷結殺人事件。遺体が多量の放射能を帯び、白血球が極端に減少していることに気付いた牧は、これを「スペクトルG線」によるものと判断する。原爆病の治療に効果があるが、発生させるには原爆以上の熱量が必要とされる特殊な光線なのだ。それをどうやって?一方三沢は妙な一致に気付く。この連続殺人事件が、歌手・高木京子の歌う「死神の子守唄」の歌詞と同じように行われていることに……。

 この話を見終えてフト「これって、12話じゃないか?」という疑問が沸いた。そう、あの「遊星より愛をこめて」のことだが、脚本・監督共に同じ方が手掛けており、大きく捉えれば今回は12話の再構築ともいえそうな作品でもある。とはいえ、結局は宇宙からの侵略者ということでこれといった悲壮感を得ることも無く、設定以外にそれ以上のものを感じなかった「遊星〜」と比べても、話のインパクトはこちらの方が上だった。スペクトルG線の設定も秀逸で、それを超低音から発生させようとするというアイデアは、SFとしてきちんと成り立っている。そして原水爆に対する激しい怒りと、それ故にその才能を犯罪に染めるしかない天才科学者・吉野(草野大悟が熱演!)が、正義としての科学を考える牧と対面するシーンは、その言葉の一つ一つが実に重い。 

「吉野……待て、お前も科学者なら、俺の話を聞け……」
「科学者? 科学が何をした。原爆や水爆を発明しただけじゃないか」
「そうかもしれない。でも、君のやり方は……」
「間違ってるっていうのか! ……いや、間違ってるかもしれない。
 しかし、俺がやらなかったら誰が京子の白血病を治してくれるんだ?
 日本の国がか? それとも原爆を落としたアメリカがか? 誰も、何もやってくれやしない……」
「だからといって、罪も無い娘を」
「じゃあ京子に罪があったって言うのか! おふくろの身体にいただけなのに、
 誰だ、誰が京子を犠牲にしたんだ! 君に答えられるか?」
「吉野君……やっぱり、君は間違ってるよ。な、話し合おう、話し合えば……」
「フフッ、話し合って、京子が治るか……」

 自分が「怪奇大作戦」にハマるきっかけとなった一本。セブンは封印されているが、こちらはその気になればいつでも見られる。実相寺昭雄佐々木守による反戦メッセージをとくとご覧あれ。
 ところで「♪10人の娘が旅をした」が劇中で「売れている曲」となっていることにツッコミを入れている方も多いと思うが……クラブで歌うような歌手だから表舞台に出ることはないだろうが、例えば放送当時に出始めていた「アングラ系」の一部として売られていたらどうだろうか。高木京子が地道にこの歌を歌い続け、口コミで話題を集めた結果ついにレコード発売が決定、世間体に徐々に知られ始めた頃に冷凍殺人事件が起き始めた可能性もあるのだ。歌詞が不気味でも、知名度が高い歌はあるのだから一概に馬鹿にしてはならない。だったら山崎ハコの「呪い」はどうなる?