岡本喜八監督永眠

 特撮怪獣モノに入りびたりの自分でも、たまにはそうでない映画も(それなりに)観ているが、黒澤とか小津を面白いと思う前にハマったのが喜八作品だった。WOWOWで放送されていたのを一気に観たのがきっかけだが、まず『日本のいちばん長い日』に圧倒され、『殺人狂時代』の奇怪さが好きになり、『独立愚連隊』では格好よさにシビれ、『肉弾』では“あいつ”の面白さを良いと思った。この4本はシネスケでも全部★5付けているくらい気に入っている。
 ★5こそ付けていないが『江分利満氏の優雅な生活』もお気に入り。戦中と戦後で大きく変わってしまった日本の中で、特に能があるでもないけどきちんと生きてきたことを素直に讃える喜八演出。原作のイメージどころかシチュエーションをそのまま描いているにも関わらず、何の違和感も無く仕上げてしまうあたりは最高だった。「宮本武蔵なんか全然偉くないよ、あいつは強かったんだから。本当に偉いのは一生懸命生きている奴だよ、江分利みたいな奴だよ!」……この台詞に自画自賛以外のものを感じた人はいい人だと思います。
 それにしても、また一人巨星が堕ちてしまった。合掌。