「市の命はそう安くは売れませんぜ。」

座頭市物語 [DVD]

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 というわけで、先日レンタルした『座頭市物語』を鑑賞。時間が無かったので前半・後半に分けてだったが、それだけでも十分面白かった。勝新演じる市の人物像はもちろん、ライバルの造酒(天地茂)他の登場人物の描き込みもきちんとなされており、彼等のエピソードを同時進行させることで最後まで目を離さなくさせる構成は実にお見事。あと表情のちょっとした変化やワンカットの長回しだけで、こうも心境を描けるというのか。今これと同じことをやったところで、とてもじゃないが95分なんて尺に収まりません。三隅監督の作品は特撮繋がりで『釈迦』と『大魔神怒る』しか観たことなかったけど、改めてその力量を知った。
 市は強い。「目が見えない」というを逆に己の武器にしている。だがそれゆえに彼は孤独である。“先入観”というものが無いだけに、他人の感覚と心理を読み取る力もまた強いのだ。市がやくざ者であり続けるのは、他人の心が分かってしまうことが幸せでないことを知っているからなのか、それとも……。