「ドラえも〜ん、発明のアイデアが出てこないんだよ〜」「自分で考えなよ」

「世に溢れるほとんどの発想の中でも、実用性を伴うのはほんの一握りだ。」フトそんな言葉が浮かんだ。
 『ドラえもんの発明教室』という漫画がある。「月刊小学5年生」に連載されていたものらしく、ドラえもんが登場してはいるものの作者はしのだひでおという手塚プロ出身の人。とはいえコロコロコミックでも「まんがチャレンジ」という読者投稿コーナーを持っていた人なので絵柄には覚えがあった。この『発明教室』も同じ系統で、読者からの発明アイデアドラえもんが紹介していく、という内容なのだが、漫画喫茶で初めて読んだ時に思わず吹き出した。
 何が吹き出すかって、どの発明品もツッコミどころが多すぎる! まあ小学生の発想だから仕方が無いといえばそうなのだが、ドラえもんは決して甘く対処することなく問題点をズバリ指摘しまくっている。ドラえもんのツッコミはイコール作者のそれであり「もう少し考えてからハガキを贈ろうね」というメッセージが伝わってくるようだ。
 例を挙げよう。

  • 磁石付きゴミ箱

 「ポイ捨ての空き缶がゴミ箱の強力磁石に吸い付かれてくずかごの中へ!」1キロ先の空き缶まで吸い寄せるそうだが、そんな強力な磁石があったら空き缶どころか別のものまで集まってくるぞ!ここでのドラえもんツッコミは「アルミ缶は磁石にくっ付かないもんね。」

  • 手回し肩たたき

 「肩を叩きたい人の肩にこの道具を乗せて、脇に付いたレバーを回転させるとアームが上下して肩を叩く」……ちょっと待て、肩にその道具を乗せてどうやって肩を叩くんだ?ドラえもん「よーく考えなくっちゃね」。

  • ネコ舌用食器

 「お皿の上にフリーザーが付いていて、熱いメニューを冷ましながら食べられる」フリーザー?ドラえもんじゃなくて作者のツッコミ「君、フリーザーというのは食品を凍らせる機械なんだぞ!」クーラーの間違いでした。

  • 6面プレーヤー

 「立方体の6面それぞれにレコードの回転台が付いているので、一度に6曲の演奏が可能」それ、どうやって地面に設置するんだ?

  • 自動靴そろえセット

 「強力磁石付の靴と鉄板を仕込んだ玄関マットがあれば、どんなに行儀が悪い子でも靴を揃えて脱げる」磁石ネタが多いのはやはり小学生だから?しかし磁石を仕込んだ靴だなんて、釘とか踏んだらずっと付いたままだし、砂場に入ったら砂鉄まみれだ。ドラえもん「磁石をマットに、鉄板を靴に仕込めばよかったのに」。

  • レンズ防寒具

 「レンズで作ったコートを作れば、太陽光を集める効果ですぐに暖かくなる」これはあれか、虫眼鏡で黒い紙を燃やす実験からヒントを得たのだろう。大失敗だけどね。ドラえもん「レンズから焦点までは距離があるよね。肌につけても暖かくならないよ」。

  • インスタント焼き芋

 「熱湯3分、あっという間に焼き芋の出来上がり!」だったら冷凍食品にした方が良くないか。ドラえもん「芋には違いないけどこれ焼き芋かなあ。これじゃ芋スープだよ」。
 ……中には「マフラー手袋(長いマフラーの先が手袋になっている)」「ローラーバター(バターを筒状にすればコロコロのように塗れる)」「温度計付スプーン(料理の温度がすぐ分かるから猫舌でも安心)」のように、かなり実用性の高いものもあったりするから侮れない。大人にはとても思い付かない様なところからアプローチをかけて行くという目の付け所の大胆さと、そのアイデアの自由さは読んでいて楽しいので、もし漫画喫茶とかで見かけたらぜひご一読の程を。
 もしも今こんな連載をまた始めたとしたら、やたらと「コンピューター」に頼った発明品ばかり出てきそうだな。この本に出てくるようなアナログな発想はもう出てこないのだろうか。