わだつみの声はこんなじゃない。

 DVDで『きけ、わだつみの声』鑑賞。といっても昔のではなく(本当はそっちが観たかったけど、ビデオがどこにも置いてない)終戦50年目に作られた、あの織田裕二風間トオル仲村トオルそして緒形直人とかが出てた方のヤツね。正直、あんまりいい評価を聴いたことが無いので、さてどんなものかと思ったら……
 ……その通りの内容でした。何がダメって、作ってる側の視点がまずダメ。兵士達の目線に立ってないで、自分とは関係ないとばかりに突き放して俯瞰してるだけ。この時点でもう映画そのものの説得力など無い。おまけにこの映画、命の大切さ云々を訴えようとしているつもりなのか、特攻にせよ何にせよやたらと「死」が劇的に描かれ過ぎている。例えば織田が敵戦車に爆弾持ってトライとか、風間の特攻とか、仲村が好きな慰安婦と一緒にバイクに乗って死ぬとか、戦死するにしても全部見せ場になっているわけ。俺にとってこういうのは危険思想ですよ。
 「青春を戦争で奪われた者達の死は何て悲しんだろう!」とこの映画は言いたいわけだが、嘘ですよ、大嘘。戦争による死がそんなに美しいはずがない。目を向けるべきなのは、何の見せ場も無く死んでいったその他大勢の兵士の方ですよ。戦いたくてもろくに戦えず、もはや全身が狂気に満ちた状態で敵陣に突撃し、あえなく玉砕して果てた奴等の“犬死に”を見るべきなんです。それがどうですかこの映画、綺麗過ぎます。だから、風間の特攻機は敵艦に到達出来ないで墜落して無駄死に、織田の爆弾が誤爆して他も巻き添え、という風にやって初めて戦争の無意味さが分かるってもんです。
 まずは岡本喜八の『肉弾』か『激動の昭和史 沖縄決戦』を観なさい。話はそれからです。