リア王。

乱 [DVD]

乱 [DVD]

 DVDで『乱』鑑賞。id:pencroftさんが「凄い」と述べていたが、本当にその通りの画面が次々と出てくるのには驚く。山の稜線にずらりと並んだ兵士、それを反対側の山腹から撮った場面などを観ると、これが邦画かと思えるほどのスケール感があるのだから。黒澤明は、この映画ではとにもかくにも「画」で魅せている。カメラで捉えてフィルムに焼き付けるのはどの映画でも同じだが、黒澤は目の前のことに囚われず全体の雰囲気も含めて全て収めようとしている。実際『乱』には顔がどアップになったカットが見受けられないが、これも画面全体で絶望やら歓喜を表現しようとしているからだろう。
 しかし1985年という時代に、この手法がスンナリ受け入れられたとは思えない。本作における黒澤のこだわりはある種の「頑固」でもあり、それに対する拒絶反応を生み出す温床でもある。軽薄短小が言われ始めた80年代に、クロサワはちょっと似合わなかったのではないか。
……この辺については、シネスケにコメント投入する際に練り直してから改めて書きますね。